よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2012/07/10(火) 06:37:52

DolphinDivers
タイトル:『Dolophin Divers』(AXL/2012年6月29日)
原画:瀬之本久史/シナリオ:北側寒囲
公式:http://www.axl-soft.jp/products/08/
批評空間レビュー投稿:済 → ネタバレ無し
定価:8800円
評価:B(A〜E)

※具体的な内容に踏み込んだ長文感想(内容紹介)は、批評空間さまにて投稿しております。ご関心あれば上記リンクよりご覧下さい。

関連記事:攻略:『Dolphin Divers』(2012年7月11日)


◆評価について
批評空間さんでは68点つけたので、点数的にはCなのですが、こっち(ブログ)は個人的な評価なのでBとしました。テーマ的な部分で大幅減点したのですが、個人的には共感できる部分もあり(単に訴求力が無いだろうということです)、またキャラの掛け合い等で楽しかった部分、サブヒロイン軍団の破壊力を加味すればCってことはないなあ、と。ぶっちゃけ瀬之本久史氏の絵だけでCくらいいっちゃうんですよね!

AXLさんは「すたじおみりす」時代の作品から好きで、ずっとファンを続けています。毎度凄く丁寧に作品を作っておられて、本作もそんな感じ。オフィシャルなんかを見ても、ツイッターの「フォローミー」にちょっとしたネタを仕込んであったり、見る人を楽しませようという気概が心地良い。これからも応援を続ける所存です。

◆雑感
投稿した感想の内容ですが、テーマに関わる部分を序盤に固めたので、その部分だけ引用。
仲間との協力、家族の絆、そして都会を離れた田舎にこそ残る美しき故郷の暖かさ。

本作に通底するこれらのテーマを見て、私は懐かしい気持ちになった。これらは、80年代後半から90年代の初頭にかけて、私たちが教育された理想だったから。

1989年、岩波新書から出版された『豊かさとは何か』は、たちまちベストセラーとなった。バブル景気に沸き、カネとモノが溢れていた日本に、「真の豊かさ」を問うた本だ。高度経済成長期を経て、日本人は確かに豊かになった。けれど、効率主義、熾烈な競争、都市開発などの影で、私たちは大切なものを置き去りにしてしまったのではないか――。モノは満ちているのに、ココロはどこか満たされない。20年前の日本に蔓延した、そんな空虚さを埋めるべく叫ばれた主張の一つが、家族や仲間、そして地域社会との繋がりなどに依拠した「ゆとりある生活」であった。

そうした言説が一定の説得力を持ち得たのは、幸福が「富」という強烈な実体を伴って私たちの前に存在したからだろう。恰も光と影のように、目の前の強烈な具体性が、その対極に位置する抽象的なユートピアをも強く意識させえたのだと思う。

けれど、時代は変わった。恵まれた時代は去り、誰もが無前提に信じられる幸せは具体的な像を失って久しい。経済は停滞し、福祉や年金の問題で世代間の対立が起こり、家庭内暴力で家族のあり方そのものが問われはじめた。かつての理想だった「ゆとり」は、今や冷笑の的となった。

『Dolphin Divers』は、そんな状況下の現代日本で20年前の理想郷を甦らせようとしているかのようだ。本作に描かれる優しく穏やかな世界は、まさに子どもの頃、私が遠く夢見た世界を思い起こさせる。

しかし、かくも停滞した社会に生きる今の私たちが、何の留保も無くこのような世界をに賛同すると思っていたのなら、さすがに見込みが甘い。かつての楽園は、対となるきらびやかな現実の凋落とともにその理想としての地位を逐われ、無邪気にその価値を信じる人は数を減じた。もし今の世の中に楽園を甦らせるなら、それは厳しい現実を経てなお私たちが信じられるような――あるいは信じたいと思えるような――そういう強度が必要だ。残念ながら本作に、その強度は無い。

主人公・武たちと戦う抵抗勢力にそれなりの力強さがあれば、話は違ったかもしれない。しかし、エルナや理帆のルートで登場する「大人」たちは余りにも小悪党じみているし、月海に至っては戦いすら避けられてしまう。これでは私たちにとって、困難な現実から目を背けて逃げ込んだ、単なるご都合主義の物語としか映らないだろう。そして現代人の多くは、もはやそのようなご都合主義を無批判に受け容れられるほどおめでたくはないのだ。
(引用了)

これが「バブリー」(裏バブリー)な作品だというと、シナリオの北側寒囲氏は否定なさるかもしれません。けれどライターの方の意図はどうあれ、出来上がったのは良くも悪くも「無邪気」な(おめでたい)学園天国だったように思います。

誤解の無いように言っておくと、こういう仲間・故郷・家族みたいなテーマで、そこへの信頼を語るというのは全然悪くないテーマだと思っています。ただ、見せ方の問題というか。たとえばいま、某いじめ問題を間近に見て、崩壊する学級を経て育ってきた19、20歳の若者がこの作品の武たちをすんなり受け容れられるかというと、それは無理の気がする。武たちが訴えたい理念はそれとして、その理念にどう説得力を付与するかという部分がナイーブ(原語の意味で)というか。

別の言い方をすれば、私はこれを見て「ああ、昔あったユートピアだ」と切なくも懐かしい気持ちになれた。そういう内容として意味あるものに思えた。ただ、それって今の世代にとってはどうなんだろうな、と。ピンと来るんでしょうか。単に底抜けに明るい、おめでたい話に見えるだけなのではないか……。その辺の受け取り方は、多分に時代的な違いを意識してしまうんですね。宗田理ワールドとかも似たようなところがあるかもしれない。あれはまだ、教師=権力と戦うという今でも通用しそうな構成をしていますが。

「今の若い世代は恵まれている……」なんてセリフ、最近はほとんど聞かなくなりましたが、本作で描かれているような「楽園」は、その「恵まれた世代」の裏側に潜んでいた、実体無き虚構だったのではないか、というのは長文感想で述べたとおり。今の私たちがその虚構を信じるには、ハリボテでもいいので何か実体的なものを持たせてやる必要があるのかもしれません。

ちなみに長文感想のほうでは、AXLのゆかり教育(青山ゆかりさん万歳的な)と、「ゆとり」を裏で微妙にかけたつもりだったんですが、多分誰も気にしないのでスルーしてください。

それはともかく、今回はサブヒロインが凄く魅力的。メイン食ってたんじゃないか疑惑。

日常の言動がことごとくツボを押さえている完璧超人、紗英先生。萌えるお掃除用アンドロイド、アクア。そして黒の淑女、優梨さん。乃愛ちゃん(ロリ担当)はまあ、うん……頑張るのだ!

メインヒロインのルートから派生して、2つ3つのイベントだけでそのままゴール直行という短い内容ながら、下手によそ見をしないぶん内容はすっきりまとまっているし、何より余計なことを考えずにそのヒロインとの関係に話が収束していくので、下手をするとメインヒロインたちよりキャラの掘り下げには成功していた感があります。アクアが飲料缶に嫉妬する(無機物にキスするなんて!)イベントは、本作随一の名イベントでした。あの何気ないひと言に、アクアのアクアらしさと愛情が詰まってる。最高です。

掛け合いのレベルが歴代AXLでもトップクラスじゃないか、というのも書きました。個人的な好みでは、『チュートリアルサマー』と『恋楯』に並ぶかなという感じ。ただバリエーションは良いとして、龍正のがっつきネタから「どんびきだよ〜」「最低ね」に繋がる路面凍結コンボが余りにも多かった気はします。ちょっと便利に使われすぎて、龍正くん可哀想(´;ω;`)。「チュー夏」の数馬先生(つるぺたぷにー!)より酷いかもしれない……。

そんなこんなで世間的には酷評もあるようですが、もうちょっとで大化けしそうな気配がぷんぷん漂ってくる作品。『かしましコミュニケーション』のときは、こりゃあ護衛モノ以外はちょっとヤバいのかなと思っていたのですが(すみません)、これなら安心。ただ、このままではやっぱり頭打ち感もあるので、どこかでブレイクスルーが起きることを秘かに期待したい。一番しんどいのはクリエイターの方々だと知りつつ、私は無責任なことを放言して遠くから応援するしかできないのですが、次も楽しみにしています!

というわけで、本日はこの辺で。攻略関連は後日。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

「レビュー:『Dolphin Divers』」を読んだ人はこんな記事も読んでいます
レビュー:『LOVELY×C∧TION APPEND LIFE/APRIL』 (2012/04/16)
レビュー:『大犯盛』 (2012/11/29)
レビュー:『巨乳ファンタジー2』 (2012/06/17)