よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2013/05/15(水) 22:01:38

百花繚乱エリクシル
タイトル:『百花繚乱エリクシル』(AXL/2013年4月26日)
原画:瀬之本久史
シナリオ:長谷川藍
公式:「百花繚乱エリクシル」OHP
定価:8800円
評価:B (A〜F)

関連
批評空間投稿レビュー (ネタバレ無し) ※外部リンク

※具体的な長文感想・内容紹介は、批評空間さまにて投稿しております。



▼評価: 結末から遡行して語られる物語
物語を読み進める動力(物語側からすれば、読者に読ませる魅力)というのは、「先が気になる」ということに尽きるわけですが、その気になり方というのも実は二種類あって、一つは、先が見えないから結末が気になるというパターン。推理ものやサスペンスがこれにあたるでしょう。

もう一つは、結末はだいたいわかっているけど、そこへ至るプロセスが気になるというパターン。本作は、どっちかというとこれにあたります。勿論細かいオチはわからないけれど、だいたいの着地点は見えていて、要はそこにどんなプロセス(肉付け)を経てたどり着くかが「おもしろさ」になる。

水戸黄門とか暴れん坊将軍みたいなもので、最後は「やっぱりこうだよね!」という、いわば「筋書きのあるドラマ」を楽しみたい人向け。そっち方向に、高いレベルでまとまった良作だという印象です。

▼雑感
神話や英雄たちの物語のような、叙事詩的なファンタジーを読むときの、私たちの楽しみというのは、単に今現在の私たちにとって価値のある卓越性を見るということだけにとどまりません。そんな英雄たちを生み出した当時の人びとの世界観や思想を想像するところにもあります。物語を通して、異世界を覗き見るわくわく感がある、とでも言いましょうか。

そうした想像行為を支えるのは、作品世界の自律性、あるいは世界の世界としての完成度です。そして本作の特筆すべき魅力は、おそらく、いま述べたような意味での完成度が保たれている、というところにある。ブルーム巡察使の言動が、登場人物たちひとりひとりにとって(名も無き村人も含め)、どういう意味を持ち、どんな幸せをもたらしたのかが、きちんと描かれているのです。つまり、作品世界の中で、価値がきちっとまとまっている。

もちろん最終的には、ブルームが私たち物語の外側の人間にとってどういう意味を持つのか、ということが問われるのですが、それをいったん度外視して、作中のすべての人にとっての「英雄」像が完成しており、そのことが、作品としての強度を生んでいます。

物語の「英雄」というのは、およそ人の想いや願望が像を結んだものです。違う言い方をすれば、具体的な生活実感が無いところに(つまり願望が生まれないところに)、「英雄」は存在しない。本作を「英雄譚」だと(長文感想で)言ったのはそういう意味でして、つまりこの作品には、ミルトスという村で生きる人びとの、あるいは作品世界の人びとの、生活の息吹が感じられる。

そのことによって、キャラクターはいきいきと動いているように見えるし、また予定調和的な世界の動きも、作品の世界に生きる人びとの願いのかたちという意味を与えられることで、物語を進展させるためのご都合主義であることを免れているのだと思われます。

マーガレットルートで出てくる、かつ作品のキャッチコピーにもなっている「君が、君の隣人が幸せじゃないのに、国が幸せになることって本当にあるの?」というのが、この作品のメッセージ的なものだと思うのですが、私はこれを政治的なスローガンとしてではなく、「ひとりひとりを幸せにすることで、すべての人を幸せにした」英雄の事跡として読みました。

この物語は、ひとりの主人公の言動が、そのままある統一した世界の全体を語るという構造になっていて、しかもその主人公が現実離れしたウルトラ超人。そんなロマン全開の世界である以上、深遠な思想も複雑な心理も存在しないけれど、それだけにゆったりと嬉戯することのできる、「楽しい」作品でした。

▼AXLのマンネリ化をめぐって
発売直後からツイッターや各種レビューで「AXLの王道」や「マンネリ」、「AXLらしい話」、「いつものAXL」という評価を散々耳にしていたのですが、これがどうも分かりにくい。J-POPの「GLAYらしい」とかなら、コード進行や何やらで基準は分かるし、なるほどマンネリなってのも納得行くんですが、AXLの場合どういうことなんでしょう。

お酒のみながら、「エリクシル面白かったよ! いつものAXLっぽい感じで……」と言っていると、「それどんな感じなの?」とツッコミを頂きまして。いやー、私も何気なく使っていたんですが、改めて考えてみると、なるほどよく分かんない。今なお混乱しています。

エロゲーメーカーでも、「CLOCKUPの王道」とかでしたら、結構すぐ定義できそうな気がするんですけどね。絵と企画はえらい面白そうなのに、蓋を開けてみるとガンガン失速して尻切れトンボで終わる、みたいな。あと、「ハイクオソフトらしい」なら延期で、「いつものSeal」ならバカゲーとか(酷い)。

とりあえず、ネタはおいといて、まじめに考えてみましょう。おおざっぱな話をすれば、AXL作品には二つのバリエーションがあって、一つはテーマを語るための作品。「異文化理解」を押し出した『かしましコミュニケーション』や、島の生活(人との交流)を都会と対比させた『Dolphin Divers』なんかがこれにあたると思います。もう一つは、主人公の成長とか活躍にスポットを当てるタイプの作品。『Like A Butler』とか『恋楯』がそんな感じ。

もちろん、テーマを語る作品も主人公の活躍が描かれているし、その逆も然りですが、先ほど書いた通り「おおざっぱな」枠組みとしてです。一応違いを言えば、前者(テーマ型)であればストーリーテリングやプロットが、後者であれば各キャラクターの描写や掘り下げ、キャラ間の絡みが評価の基準となりやすい、という違いはあるのかもしれません。

本作はたぶん後者の路線であり、その意味でAXLの伝統的パターンから外れていないのは確かだと思いますが、それが「AXLらしさ」なのかといえば、別にそうではない(他のメーカー・ブランドでもやってること)でしょう。

また、今回は「いつものAXL」というのが褒め言葉になっているのを目にしますが、さんざん叩かれた前作『Dolphin Divers』も同じ言われ方をしていて、AXLのお約束ってのは、いったいぜんたい良いのか悪いのか。割とみんな、なんとなくで使ってる感じがする。それとも、良いAXLさんと悪いAXLさんがいるんでしょうか。私が知らないだけで。

つらつら思うに、結局「いつものAXL」や「AXLらしい」というのは魔法のコトバで、そう言っておけば大体の人は「うん、そうだねぇ」と思えるのは事実です。私も、そういえば共通理解が得られるだろう、という甘い気持ちで使っていた。そりゃあまあ、10年近く主要スタッフ安定状態で作品を作っているわけですから、似たようなところは出てくるでしょう。逆に、無いほうが怖い。

しかし、では何をもって「いつも通り」と考えているかというのは、人によって違うはずで、それが噛み合っているのか、またそれが実際に正鵠を射ているかどうかは別問題。

たとえば私の友人にたずねてみたところ、「酷いことが起こらない予定調和のハッピーエンド」を「AXLらしさ」だと言っていました。『ひだまり』のような作品は例外扱いするにしても、じゃあ、一時期常にAXL作品にあった「死亡系BADエンド」はどう扱うのか。訊ねてみたら、「ああそうか。でも、あれ見る人あんまりいないでしょ」というお返事。なるほど、それなら確かに牧歌的で平和な、刺激の少ない世界=AXLワールド、ということになりそうです。

別の友人は、「悪役がいない」ということを言っていて、それはそれでそうかもしれないと思います(決定的な悪は出ない)。しかし、それならうぃんどみるさんとかにも当てはまりそうで、AXLの独自性と言いうるかは不明。いや、「いつものAXL」と言うのはいいんですが、殊更とりあげるような特徴なのかはわからないということです。

そして以上のように、友人AとBでは、それぞれ考えているAXL像は微妙に違ってました。

ついでに私自身のことを言えば、「キャラが面倒じゃない」みたいなことを考えていました。キャラの悩みの原因が、外在的なところにあって複雑ではなく(受験落ちたとか、貧乏とか、過去のトラウマとか)、キャラ像がつかみやすい、みたいな。これも二人とはちょっと違うかなと思います。

他に、「安定感」や「萌えゲー」がAXLのお家芸という意見もあるけれど、これはそもそも「安定感」やら「萌えゲー」ということばがきちんとした意味を持っていない(人によって意味するところが違う)ので、バズワードをバズワードで言い換えただけの「たらい回し」にしかなっていない。

というわけで、このテの言い方(「いつもの〜」や「〜らしい」等)というのはひとまず、「なんか分からんけどなんとなく」くらいの意味で考えるのが妥当かもしれず、じゃあその「なんとなく」さが具体的にどこなのか、というのが個々人の感想として面白いところなのだろうかなと思います。言い方を変えれば、その具体性こそが、その人の考えるAXLということになるのかもしれません。

ああ、でも決定的なのは「青山ゆかりさんをヒロインにする」ってのはありますね。その意味で「いつものAXL」と言ってるのなら、たいへん納得出来ます。

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