よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2012/04/15(日) 23:45:09

この大空に、翼をひろげてカバー
タイトル:『この大空に、翼をひろげて』(体験版)(PULLTOP/2012年5月25日発売予定)
原画:八島タカヒロ、基井あゆむ、田口まこと(SD)/シナリオ:紺野アスタ、七烏未奏、奥田港
公式:http://konosora.jp/
定価:8800円
期待:B(A〜E)


以前の記事でお伝えした通り、現在PULLTOPさんの最新作『この大空に、翼をひろげて』の体験版が配布中。レビューコンテストが行われています。この企画、何が太っ腹ってレビュー者への景品より、「レビュー記事内に限り、体験版のキャプ画像掲載可」というところ。権利関係から日頃はどうしても文章に頼らなくてはならないことを思えば、この条項はパラダイスへの切符! というわけで、私も体験版をプレイして感想を書いてみることに。

▼プレイ時間 : 約5時間
まず、体験版に関して気になるであろう所要時間について。私は地の文を読むスピードと会話文を読むスピードを一定にしたいので、音声は時々スキップしました。全部の音声をきちんときけば、6時間くらいかなと思います。一晩で一気にやりきりました。

▼操作性 : そこそこ快適
お次は、コンフィグ関係。これについては画像を見て貰うのが手っ取り早いと思うので、キャプしてみました(楽ちんでいいなー)。

konosora_conf
コンフィグ画面を4つ並べ。

割と細かい部分まで設定できる親切設計。特に、マウスショートカットの調整が可能なのがありがたい。システムの親切さ、カスタマイズの幅では最強の呼び声高い「戯画システム」には及ばないものの、「結構いろいろできるな」というくらいには揃っています。

素晴らしいのは、直観的に調整しやすいということ。細かい設定をいじることができる作品は他にも色々とありますが、そういうのは得てして、とにかくわかりづらい。エロゲー慣れした人ならともかく、初心者は何をどういじれば良いやらわからず、結局デフォルトのまま……という、「親切があだになる」タイプのコンフィグも多い。けれどこの画面であれば、戸惑うことは殆ど無いでしょう。操作画面がMS-DOSプロンプトからWindowsになったくらいのわかりやすさがあります。その意味で、ユーザーフレンドリー。

ただ、最近割と多くのブランドが搭載している「シーンスキップ」や「前の選択肢に戻る」が無いのは残念。周回プレイのお友達ですし、後で日常シーンを見たくなったときやレビューを書く際などには非常に便利な機能なので、この手の長い作品には標準搭載してほしいなあ、などと思います。

画面は、16:9のワイド。この調整はさせてほしかったところですが、まあもう他の作品も軒並みワイドっているので、贅沢は申しますまい。時代の流れということで、ワイドに慣れる方向で行きます。

▼物語 : あらすじ紹介
ロードレース(自転車)の有望な選手だった水瀬碧(みなせ・あおい)。レース中の事故によって選手生命を断たれた彼は、心機一転をはかるべく故郷の風ヶ浦に帰ってきます。5年間離れている間に開発が進み、すっかり様変わりした故郷でしたが、知人や友人は暖かく碧を迎え入れてくれます。

働いていたら余計なことを考えずに済む、という母親の配慮もあって、通学しながら恵風女子寮の寮母(寮父?)として働くことになった碧。紆余曲折を経て碧は、帰ってきたその日に出会った、見た目可憐・中身残念な少女・羽々音小鳥(はばね・ことり)、久しぶりに再会した親友・姫城あげは(ひめぎ・あげは)、学園一の天才でありながら、ある理由のために規定年限を超えて留年し続けている「超」留年生・望月天音(もちづき・あまね)らと共に、廃部寸前だったソアリング部を立て直し、グライダーで「雲の回廊」を見るという目標に向かって、再び走り出したのでした。

体験版で描かれるのは、碧たちがソアリング部に入り、天音が引退するまでの間。「雲の回廊」を目指して駆け抜ける、〈最後の夏〉が舞台です。1つの大きな山場が終わるまで公開してくれるというのは非常に太っ腹。

▼演出(音楽・音声・エフェクト等) : 良好
音楽、音声はどちらも良い感じ。エフェクトも気合い入っています。私は映像や音楽関係を専門的に語れるほどの素養がないのですが、雰囲気を壊すような要素はありませんでした。むしろ概ねプラス要素と考えて問題ないかと。特にCVについては、「読むスピードの為に音声途中でもカットします」と言い持って、あんまりカットしなかったくらい良かったです。いや、良いか悪いかはわからないと言っているのに何だそれはと言われそうですが、要するに私の好みだったということで……。あげはちゃんの声好かったなー。あと、アヒルが茶谷やすらさん! ガァーしか言わないけど、何故か妙な雰囲気というか存在感があります。

演出に関してはそこまでど派手ではないものの、凝ってるな、という感じ。特に、キャラクターの視点の動きが視覚的にわかるよう、丁寧な工夫がしてあって良かった。また、ここぞというシーンにこまめに差し挟まれるちょっとしたムービーは雰囲気を盛り上げてくれています。

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こんな感じで風の動きや空の色など、インパクトが求められる場面で演出がこまめに挿まれます。

▼キャラ : あげはタン(*´Д`)ハァハァ
体験版でのメインヒロインは、同学年の2人と天音の3人。下級生である双子の出番は少なめ。描写が多いのは圧倒的に小鳥ですが、魅力的で奥行きを感じさせたのは、あげはでした。どっちかというと男前に見えるところも含めて、「いい女」。誰よりも気配りができて、他人の痛みに敏感で、それゆえに一歩引いてしまう健気な感じがにじみ出ています。

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マジいい女ッス、あげはさん!

小鳥と天音はキャラが固まってる感じがして、あとは彼女たちをとりまく外側の環境次第で印象が確定されるのを待つしかないでしょうか。特に天音は外的状況にひっぱられている様子が非常に強いので、今後の展開待ち。小鳥はフツーにギャップが可愛い娘でした。

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へっへっ……おねがいされちゃあしょうがねぇな……。

サブキャラも、ウザ系はほとんど無し。某ロボット部顧問教師を除き、主人公たちに好意的だし、大きな波風は立ちそうにありません。サブキャラの中で人気を二分しそうなのは、生徒会副会長の朱莉さんと、あげはの妹、ほたるちゃん。佳奈子さんもイベント次第では人気急騰のポテンシャルを秘めていそうですが、いまのところはちょっと慎みが足りない。

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なぜこの人がメインじゃないのか……。

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ほたるちゃん、お姉ちゃんに遠慮することはないのよ。三角関係発動に(無理だろうけど)期待したい。

近づくだけで正気を失いかねないような、SAN値直葬の名状しがたい萌えキャラ(たとえばこんな娘)は残念なことに見あたりませんでしたが、全体的になかなか高いレベルでまとまっていると思います。

▼感想 : 期待大
体験版をプレイし終え、かなり期待が高まっています。良いところできりやがって畜生! という感じ。『君が望む永遠』の体験版、俗に言う「遙クラッシュ」の衝撃ほどではないにしろ、なかなかインパクトのある劇的な幕切れと、これから先を楽しみにさせる力強いメッセージで締めくくられています。

そもそも5時間もかかる体験版というのは、Hシーンが無いとかそういうことを除いて純粋に量だけで考えれば、その辺の低価格作品一本分くらいのボリュームがあるわけですから、こりゃもう出血大サービス。序章をまるごと無料配布しました、という具合です。雰囲気が合わない人は間違いなく回避可能だし、気に入った人は続きが気になって仕方ない。体験版としては成功しているのではないでしょうか。

全体の雰囲気は、コミカル。明るく楽しい学園生活がテンポ良く展開されていきます。ただし、シリアスな場面も差し挟まれ、物語の軸はシリアスな方を中心にして動きそう。気になるのはバランスですが、目下どちらが浮いちゃうこともなく、メリハリがついている。悪くないと思います。

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田口まこと氏のSD絵も冴えまくり。いやぁ、かわいいですね。

また、1つの事象やキャラを多面的に描くことで、一定の深みを与えています。たとえば、小鳥とあげはの間の確執。小鳥の過去や、あげはが語っていなかった事実によって、滑稽を通り越してやや聞き分けのない子どものように見えていた小鳥の態度が、決して理由なきものでない、ということがきちんと語られる。

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しゅ、修羅場じゃ……! 主人公完全に空気。

しかし直後、きちんとフォローというか、小鳥が単にあげはを突き放したいだけではないという面も語られます。楽しかった。でも、それを態度にだせない。そのことは、単に小鳥が「素直じゃない」という性格を与えられているからではなくて、小鳥のおくってきたこれまでの生き方の、やむを得ざる帰結としてこんな性格になったんだ、という語り方ですね。テンプレの性格設定を用意して、こんな性格だからこういうこと言いますよ、という「キャラ付け」ありきの作品が多い中、きちんと登場人物を作る姿勢が見えて好印象。

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思いがけない、小鳥の内心の吐露。彼女だって、楽しくない訳がなかった。

ただそうなると、内面に沈んでいく暗いキャラの描写が全体の雰囲気にかみあわないのではないか、という心配も出てきます。主人公である碧は、事故によって夢やぶれたという暗い過去を持つわけですが、えてしてこの手の「悲惨な」過去を持つキャラというのは、ことあるごとに過去の話をしては「かわいそうなボク/ワタシ」に閉じこもる。もちろんそういった形で内面を掘り下げるというのはアリだし、その深みによって感動的な物語を紡いだ作品はいくつも思い当たりますが、度が過ぎるとそのあふれ出る悲壮感と自意識が重石になって、作品の雰囲気が沈んでしまう。明るい調子が急激に損なわれる可能性もあるわけです。

と、煽ってみましたが体験版の限り、そちらのほうは心配無さそう。

碧くんは、体験版時点では過去に対して結構きちんと向き合っている。少なくとも向き合おうとしています。必要以上に落ち込んだり自虐的になったりせず、深刻にうけとめつつも前向きに生きる、という好青年。足が動かない小鳥も、ちょっとネガ入っていますが、基本は同じ。登場人物たちは前向きさや芯の強さを発揮して、爽やかな雰囲気を損なわずにいると思われました。

あと、丁寧にキャラを描いていながら、テンポがかなり良い。一晩でやりきったと書きましたが、正直やめどころを見失っていました。不必要なイベントが余り無いんですよね。ボリューム確保のためのひきのばし工作みたいなイベントも無く、情報密度が高い。この後も同様であれば、非常に楽しみです。

▼不安点とか気になったところ
序盤から思わせぶりに謎を配置しすぎるきらいがあり、緊張感が分散してしまっています。特に、関連するのかしないのかよくわからない謎がどんどん新しく出てくるため、ストーリーに関心を絞りきれない。ソアリング部の目標という大目標に向かって進むという芯はズレないものの、小出しにされる伏線が多すぎて、段々意識が薄れていく可能性が……。

また、結構盛大に風呂敷を広げたぶん、オチが尻すぼみになると評価が急転直下の大暴落になる可能性もあります。その辺は怖いかなぁ。

細かいところですが表現というか内容というかでちょっとおや? と感じるところもありました。たとえば冒頭、地元の街並みを見て「それは、過去と未来が同時に姿を現したような光景」と碧が感想を言い直すのですが、言い直したのに抽象的になって余計わかりにくくなるという。もともとこういう文学的な表現を使って説明したなら良いのですが、「ような」と具体的にわかりやすくするための言い換えを用いてこれというのは、ライターさん的には後者のほうがわかりやすいと思って書かれたのでしょう。結構感性重視に文章を書いておられるのかな、と(私も人のことは言えませんが)。ライターさんの感覚についていけるうちは良いのですが、ついていけなくなると厳しくなる可能性はあり。まあこういうのは、普通余り気にしないし私もたまたま目に付いただけなので、物語に没頭するとどうでもよくなるレベル。

あと、一部料理好きの間で物議を醸していたのが次のシーン。

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ナポリタンは思いっきりトマトソース系じゃないか(参考:Wikipedia)、ということでした。これについては、ショウガ焼きと並べていることから、べったりした重たい食べ物ということでニュアンスは非常によくわかるし、Wikipediaにも記載されているように今で言うところのナポリタンはトマトケチャップ、トマトソースを使ったあっさりパスタは一般のナポリタンとは違うという認識が広く通用しているので、このような言い方になっても別に良いんじゃないかなと思います。

▼補足
・本作の略称
「ころげて」になりそうなのでしょうか。個人的にはツイッターでネタ的に言われていた「大空翼」も捨てがたく……まあ、集○社さんが怖いし、無いか。

・気になる伏線
寮の行く末と、飛岡先生の態度。この2つが気になっています。特に飛岡先生は不自然なくらいイヤな奴になっているので、実はこの人がソアリング部OBでした、くらいの仕込みはあるのかなと思っています。そうでないと、他のキャラとのバランスとれないような……。

・「好きになるって、こういうこと。きっと」
キャッチコピーは非常に素敵だと思うのですが、いまのところまだ届いた感じはしません。なんとなく、「与えられるもの」という序盤の一言との繋がりが気になっているのですが、今のままだと一緒の目標に向かって歩いていたらなんとなく好きになっちゃいました、みたいな普通のノリに落ち着くのでしょうか。製品版でどうアプローチされるのか、楽しみです。

・副題「Extend the little wings which fly in this sky highly.」
これが非常に気になります。extendは普通、領土なんかを拡張する時に使うので、「翼をひろげる」のように《閉じたものをひらく》という意味の「展げる」とはかなりニュアンスが違う。英語だと「spread」か「expand」を使うのが一般的です。また、wings which fly...を直訳すると、「空飛ぶ翼」(空を飛ぶための翼ではなく、翼が空を飛んでいる)という意味でしょう。恐らくはグライダーのことを指しているのだと思いますが……。

つまり、英語のタイトルから意味を拾えば、《空飛ぶ翼を大きくしよう!》という意味合いになるのでしょうか。「この大空に、翼をひろげて」という日本語タイトルだと、「自分が」翼を広げる感じしかしませんが、英語タイトルのほうは「みんなで」飛んでいくという感じがして、考え過ぎかもしれませんが、とてもよく練ったもののようにも思われるのです。

という感じで、色々述べてきましたが、以下のあげはちゃんの一言をもって〆にいたします。ほんと、発売が楽しみ! もちろんあう・あわないはあると思いますが、それを判定するには体験版は充分な内容だと思うので、興味のあるかたは是非プレイされることをお薦めします。

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画像をぺたぺたはりまくったせいでかえって見づらくなったかしら。でも、一度やってみたかったんですよね。楽しく感想をかけて、割と満足です。それでは、本日はこれまで。また明日お会いしましょう。

『この大空に、翼をひろげて』たった一つの青春がここに― 姫城あげはVer
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コメント

「extend」について

グライダーのライセンス保持者の自分から補足です。
航空業界では、「extend」に「翼を長くする」等と言った意味も有ったりします。

一機のグライダーをイメージしてください。
通常は、それで完成形です。
次に、その両翼に小さな翼を加えて、翼の長さを長くしたりします。
こういった事は、グライダーの設計者が性能向上などを狙って新しい型のグライダーをとして
再リリースするという形で、度々あります。
この拡張した部分(パーツ)を、「extention」と言ったりします。
翼幅が15mから17mになったり、ウィングレット(説明省略)を付けたりと、一般の方からすると
「ふーん、それで?」と思われる程度かも知れませんが、機体の性能は非常に大きく変わります。
それこそ世界が変わるかのように。

と言う知識を得てから「Extend the little wings which fly in this sky highly.」を読むと、
またその見方が変わるのでは無いでしょうか?

それをこのゲームの世界に当てはめると、自分と言う一つの存在に、空を飛ぶと言う機能を
「extend」する、とも読めますね。
OYOYOさんと同様、私もグライダーの事を指していると思います。

更に深読みするならば、体験版終盤で瓦礫から回収した「アレ」が更にExtendしてくれるのかな?何て
思ったりもしていますが、さすがにこれは考えすぎでしょう。
ハンドラダー、、、まさかね。
何にせよ、製品版を楽しみに待ちたいと思います。

では。

通りすがりさん江

コメントありがとうございました。なるほど、グライダーでは「extention」というのですね。大変勉強になりました!

お話をうかがって、「大空に翼をひろげて」の「に」が、私は引っかかっていたのだなとわかった気がします。大空に向かって羽をひろげる(たたんでいた羽を展開する)だとやはりextendにはならない(すでにひらいている翼を「長くする」のだから)のでしょうが、「大空において」(で)のような意味だと、そこで翼をどんどんextendしていく、ということで皆の場所や繋がりを広げていく、という意味にとっても面白いのかもしれませんね。

若干言葉遊びじみた感じにもなってきましたしスタッフのかたがどういう思惑でつけられたのかは存じませんが、制作側の真意を離れても、意味深で良いサブタイトルだなとの念を改めて強くしました。

瓦礫から発掘したせっk……アレは、今後どうなるか楽しみ。個人的には、双子の頭良いほうがいろいろ絡むのではないか、などと期待しています。

いずれにせよ製品がでるまであと少し。楽しみですね!

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