よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2012/02/23(木) 09:57:57

うなずいた……うなづいた? あれ? どっち? というように、「ず」だか「づ」だかわからない。あるいは、「じ」と「ぢ」のどちらが正解かわからない、という経験、皆さんもおありではないでしょうか。私はしょっちゅうです。

結論から言うとどちらでも良いのですが、この辺りのルールって良くわからないものが多いですよね。「血」が「ち」と読むから「鼻血(はなぢ)」だと習ったのですが、それならどうして同じように「ち」とよむ「地」を使った「下地」は「したぢ」ではなく、「したじ」なのか。「大詰め」は「おおづめ」、「寿司詰め」は「すしづめ」なのに、「差詰め」は「さしずめ」でも「さしづめ」でも良いらしい。おなじ「詰」の字なのに、おかしいじゃないか!

もしかすると、平仮名の表記と漢字との間には、関係が無いのではないか、という感想を抱くのも当然でしょう。試しに、ネット上でどのように言われてみるか検索してみると、たとえば次のような意見が出てきます。
Yahoo知恵袋 forestsaregreenさんの回答
「現代仮名遣い」は矛盾だらけですので、辞書で確かめるよりないと思います。(中略)「ず」と「づ」は同音とみなし、すべて「ず」に統一するというのがその趣旨だったのでしょうが、漢字との矛盾から「づ」がどうしても残ってしまったというのが実情だと思います。

Yahoo知恵袋 ka04zuさんの回答
「現代仮名遣い」では、「じ」「ず」を使うことを原則としていて、次の二つの場合に限り例外として「ぢ」「づ」を使うことになっています。
1、同音の連呼 例 つづく(続く)、ちぢむ(縮む)
2、二語の連合 例 はなぢ(鼻血)、みかづき(三日月)
「〜しづらい」は、「する」の連用形「し」に「つらい」が接尾語的に付いた語、つまり二語の連合にあたるので、「〜しづらい」と書きます。「うなずく」の場合はちょっと複雑です。これも「うな(うなじ)」と「つく(突く)」が合わさってできた語で二語の連合にあたるのですが、元々二語であったという意識が薄いとの理由で「うなずく」と書く、と決められてしまったのです。つまり、「例外の例外」というわけです。
ベストアンサーのものだけを拾いましたが、そのほかにも色々なことを言っている人がいて、どうも要領を得ません。というか、あまり統一的な見解がなされていないように見える。ただ、ここに「現代仮名遣い」なる名称が出てきました。

そういえば、そんなのもあったなあ、と今更思い出す私。要するに、お国が推奨する仮名遣いのルールというのがあるわけです。ワープロで変換したときに「『うなずく』が本則」などと出ることがありますが、その「則」を定めたものですね。実際の内容がどんなものだったか確認しておきたいなぁ……ということで、教えて、グーグル先生!!

現代仮名遣い(文部科学省) 

さすがは先生。5秒もかからずブツを寄こしてくださいました。さて、上をご覧になっていただければ、いきなり「あれ?」と思うところに出くわします。そう、「なお、昭和二十一年内閣告示第三十三号は、廃止する」というこの一文。どうやら、これ以前にも規則があったようです。そこで、「昭和二十一年内閣告示第三十三号」とやらを調べてみると、次のようなものがでてきました。

現代かなづかい

どうやら、「現代仮名遣い」とは別に、「現代かなづかい」というものがあったらしい。そして、「現代仮名遣い」の登場により、「現代かなづかい」は廃止された(ええい、ややこしい!)、ということのようです。では、この二つ、一体なにが違うのでしょうか。

端的には、コンセプトが違います。旧版「現代かなづかい」の「実施に関する件」には、次のように書かれていました。
國語を書きあらわす上に、從來のかなづかいは、はなはだ複雜であつて、使用上の困難が大きい。これを現代語音にもとづいて整理することは、教育上の負担を軽くするばかりでなく、 國民の生活能率をあげ、文化水準を高める上に、資するところが大きい。それ故に、政府は、 今回國語審議会の決定した現代かなづかいを採択して、本日内閣告示第三十三号をもつて、これを告示した。今後各官廳においては、このかなづかいを使用するとともに、廣く各方面にこの使用を勧めて、現代かなづかい制定の趣旨の徹底するように努めることを希望する。
この後に続く、「現代國語の口語文を書きあらわすかなづかい」というフレーズが、「現代かなづかい」の特徴をきれいに表しています。要するに、「かなづかいを口語にあわせて統一する」、「それをガンガン他の人にも勧めろ」ということの模様。文の表記が口語とずれているのが、生活にとってためにならないから、これを是正して生活を向上させねばならない!! という強烈な義務感とか熱意を感じます。

一方、新版「現代仮名遣い」の場合はどうか。こちらは、仰々しい理念や変革への熱意はなりを潜め、あっさりしすぎではないかと思うほど簡潔に、自らの立場を表明しています。
一般の社会生活において現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころを、次のように定める。
所詮は「よりどころ」であって、強制力なんて無い。社会生活を便利にするための、一つの参考基準ですよ、ということになっています。そして、「廣く各方面にこの使用を勧め」ようとしていた「現代かなづかい」と異なり、「この仮名遣いは,科学,技術,芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない」と、この規則に個人レベルでは従わなくても良い(逆に言えば、日常生活のオフィシャルな場、たとえば試験や書類などでは従うのが望ましいということになるのかもしれませんが)、と言っています。

ここから分かるとおり、どうやらそもそもオフィシャルルールであるところの「現代仮名遣い」さんは、そんなに厳しい人ではない様子。守らないからといってアカウントBANとか即ブロックのような鬼対応をするようには見えない。ということはそんなに目くじら立てなくても良いのかもしれませんが、とはいえ、ここまで見たのだから折角だし、冒頭の疑問をぶつけてみたいと思います。

「現代仮名遣い」によりますと、基本原則は発音と表記をあわせる、ということになっています。そして、濁音「zi」「zu」は、「じ」「ず」のに統一する、ということです。「現代かなづかい」が「「クヮ・カ」「グヮ・ガ」および「ヂ・ジ」「ヅ・ズ」をいい分けている地方に限り、これを書き分けてもさしつかえない」として、「ヂ」と「ヅ」や「ジ」と「ズ」を音として読み分けているのなら、かき分けても良い、としていたわけですが、こうしたニュアンスを引き継いでいるとも言えます。

しかし、中には例外が存在する。石頭だった「かなづかい」さんに比べ、随分いいかげん柔和な「仮名遣い」さんは、数多くの例外を認めてくれます。懐が深いんだぜ……。

そんな例外について書かれたのが、「表記の慣習による特例」である「凡例第2」。濁音表記は、「5」項に書かれていました。以下、少々長いけれど全部引っ張ります。
5 次のような語は,「ぢ」「づ」を用いて書く。

(1) 同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」


例 ちぢみ(縮) ちぢむ ちぢれる ちぢこまる つづみ(鼓) つづら つづく(続) つづめる(約△) つづる(綴*)

〔注意〕 「いちじく」「いちじるしい」は,この例にあたらない。

(2) 二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」

例 はなぢ(鼻血) そえぢ(添乳) もらいぢち そこぢから(底力) ひぢりめん いれぢえ(入知恵) ちゃのみぢゃわん まぢか(間近) こぢんまり ちかぢか(近々) ちりぢり みかづき(三日月) たけづつ(竹筒) たづな(手綱) ともづな にいづま(新妻) けづめ ひづめ ひげづら おこづかい(小遣) あいそづかし わしづかみ こころづくし(心尽) てづくり(手作) こづつみ(小包) ことづて はこづめ(箱詰) はたらきづめ みちづれ(道連) かたづく こづく(小突) どくづく もとづく うらづける ゆきづまる ねばりづよい つねづね(常々) つくづく つれづれ

なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として,それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし,「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。 例 せかいじゅう(世界中) いなずま(稲妻) かたず(固唾*) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく うでずく くろずくめ ひとりずつ ゆうずう(融通)

〔注意〕 次のような語の中の「じ」「ず」は,漢字の音読みでもともと濁っているものであって,上記(1),(2)のいずれにもあたらず,「じ」「ず」を用いて書く。 例 じめん(地面) ぬのじ(布地) ずが(図画) りゃくず(略図)
ふむふむ……。なるほどなるほど、という感じです。これを読むと、一応最初の疑問はいろいろ解消できる感じですね。ただ、この書き方はとても分かりにくい。そのせいで、規則の解釈を巡って問題が発生しているように思われます。

たとえば、Yahoo知恵袋に書かれていたka04zuさんの回答。「現代仮名遣い」を引用し、正確な説明を試みられているのですが、微妙に外れています。どこがか? 例外を、「二語の連合」としているところが、です。

もし連合であることが問題なら、「地面」だって「地」と「面」の連合なのですから、「ぢめん」とすべきです。これについては、二語であるという意識が薄いということも無いでしょう。実はこの細則は、「連合」であることではなく、「連合によって生じた」という部分がキモ。〔注意〕の部分を読むと、そのことがハッキリとわかります。

地面や布地は、「漢字の音読みでもともと濁っているものであって,上記(1),(2)のいずれにもあたらず」、というわけです。「地」は単体で「じ」だから、このルールの対象外。つまり、連合(や連呼)によって《本来濁っていなかった音が濁った場合には、「ぢ」や「づ」を使っても良い》という設定なわけですね。「によって生じた」を落とすと、色々な例外や勘違いが大量発生してややこしいことになる。

ここまでを整理すると、以下のようなルールが見えてきます。
1.原則、「じ」「ず」で表記する。
2.「ぢ」や「づ」を使うのは、語の連呼や連合(2語が合わさる)ことで、濁音が生じた場合。
3.ただし、元来2語の連合でも、現状区別が付きにくくなったものについては、「じ」「ず」を本則とする。


ここで、恣意的な基準(客観的ではない基準)が入るのは、「3」の部分。2語の連合であるという区別がつくかつかないか、というところになるでしょう。そして、そのあたりは一応具体例を挙げつつも、最終的には「個人にオマカセです」と丸投げしちゃうのが「現代仮名遣い」ということのようです。

これを踏まえて最初の語群を確認してみましょう。

まず、「頷く」。これは本来、「項(うなじ)」を「衝く」の意味で、2語の連合です。しかし、「うなじ」が「うな」と省略されているし、漢字も「頷く」と「うなず」までをセットでまとめている。2語の連合という背景は薄れています。だから、「うなづく」ではなく、「うなずく」という表記が本則になる。

「下地」の場合は、「地面」と同様、もともと「地」を「ち」とも「じ」とも読み習わし、「連合によって生じた」濁音ではないから「したじ」、「じめん」と書きます。

「大詰め」は、「大きく」+「詰める」の2語。「寿司詰め」は「すし」+「詰める」の2語であることが比較的分かりやすいので、「大詰め」になります。

そして、「差詰め」は、「差す」+「詰める」がもともとですが、この「差す」の意味が分かりにくい、ということなのでしょう。「さしずめ」と一語で使っている場合がほとんどですから、この場合は「現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの」ということで、「さしづめ」は本則から外す(「さしずめ」を本則とする)ことになったのだと思われます。

と、そんなわけで意外とキッチリした約束が決まっており、条件は分かりやすかったです。確かに「現代語の意識」で二語に分けやすいかどうかはちょっと曖昧な感じもしますが、二語に分けて両方の意味の繋がりが見えない(差す+詰めるでどうして「さしずめ」の意味になるのか、すぐには分からないと思います)場合は、連合とは考えない、という風にしておけば概ね外さないのではないでしょうか。

思わぬお勉強記事になってしまいましたが、自分的にはなんかスッキリした感があるので割と満足です。少なくとも知恵袋のかたのように、「「現代仮名遣い」は矛盾だらけ」と一蹴する気にはなれなくなりました。

……という記事を書いた後、何気なく「さしずめ」でググると、こんな記事が。うわー、似たようなことを、私よりうまくまとめておられるなぁ、と自分のダメさを恥ずかしく思いつつ、少し違う部分もあったので、参考にしながらリライトさせていただきました。

ともあれ、そんなところで。

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「表記:「『彼女は僕に、そっとうなずいた』……あれ、うなづいた? うなずいた? どっちだっけ。よし、漢字でいいや」、の巻。」を読んだ人はこんな記事も読んでいます
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