よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2013/04/17(水) 21:59:50

 Ira Dei(神の怒)、――キリスト教の文獻を見るたびにつねに考へさせられるのはこれである。なんといふ恐しい思想であらう。またなんといふ深い思想であらう。

 神の怒はいつ現はれるのであるか、――正義の蹂躪された時である。怒の神は正義の神である。

 神の怒はいかに現はれるのであるか、――天變地異においてであるか、豫言者の怒においてであるか、それとも大衆の怒においてであるか。神の怒を思へ!

   ――三木清『人生論ノート』「怒について」



今日、というかついさっき、某レストランで夕飯を食べていると、隣の席から怒鳴り声が。

「テメェ、水持って来いつって、どんだけ待たせるんぞ! メシ持ってくる順番もおかしいじゃろボケが!」(原文ママ)

驚いてそっちを見ると、お父さん・お母さんと小さい娘さんの席で、お父さんが真っ赤な顔をして立ち上がっていました。セリフを聞く限り、水が来ないことに対してプッツンした模様。そのままこのご一家、「ふざっけんな!」みたいな罵詈雑言を並べ立てて出て行ってしまいました(お金は払ってるのを確認)。

嵐が去って、一同わりとポカーン。店員さんは周りに、「お騒がせしました」と平謝り。周囲は好意的で、「大変ですねぇ」とか声をかけている人もおられました。

どれだけ水を待たされたのか、正確なところはわかりません。ただ、私が入ったときは空いていた席でしたので、私らより後に入ったのは間違いない。ということは、30分とかとんでもない時間待ってはいなかったはずです。んで、最初に配られる水はおいてあった(グラスが空いていた)のは確認しました。つまり、最初に水を持ってこなかったのではなくて、おかわりが来なかったということでしょう。

夕飯どきで混雑する店内で、水が来ないからって怒るとはなんたる狭量……とは思いましたが、それよりなにより、一緒にいたこどもがかわいそうだなぁと。

なんせ、食べていたハンバーグセットみたいなの食べさし。オレンジジュースものみさし。彼女が残した食べ物が、寂しげにテーブルの上に残っていました。お父さんとお母さんはお酒を召し上がっていたようで、そちらはきっちり飲み干してあり(だから水を求めたんでしょうけど)。まあ、言ったら悪いけど子どもの都合無視して出て行ったんだと思います。たぶん。出て行くとき、名残惜しそうに、テーブルを眺めておりましたゆえ。

「その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるかを知れ」とは、『ハンター×ハンター』ミトさんの名言ですが、なるほど、真の怒りは「我を忘れる」ような突発的なものであるのかもしれません。そのようなものだけが、「怒り」の名を冠することが許される。それゆえに、かえって思考されたものよりも私的な領域(つまり「我」)の本質に深く根ざしたものとなるのでしょう。

だとすれば、今回の一件で怒髪天を衝いたお父上は、周囲の迷惑を顧みず、むきだしの「我」で挑みかかる場面が、レストランで水が来ないという場面であったということ。私には、そのような「我」は恐ろしいとは思わない。もちろん減少としての怒りのあらわれ(たとえば殴る蹴るのような物理的な暴力)は恐ろしいですがその人そのものには、恐れを抱きません。

ついでに、もしも「怒」がそれでもコントロールに置かれうるものだとしたら、人となりを示すのはもうひとつ、怒り方もあるだろうと思います。お店が忙しい時間帯で店員さんがてんてこ舞いであったこと、周囲が楽しく食事をしている中で怒鳴ったら雰囲気が悪くなること、加えて自分たちのこどもがまだ食事中であったこと。それらのことを顧みず、このお父さんは怒鳴り散らし、食事を切り上げて帰って行った。

やむにやまれぬ事情があったのかもしれないし、あるいは水が来ないということが彼にとってとても大きな意味を持っていたのかもしれませんが、端から見ているこちらの評価としては「周りが見えてない人だな」というところに落ち着けるしかありません。

どっちにしても、私が見た「怒」は軽かったと思うし、軽い「怒」を振り回す人間は、軽く見えてしまうなぁと思ったり思わなかったり。私も先日コンビニのレジでかっとなったことを、いささか恥ずかしく思い返したのでした。

さりとて、全く怒らないというのも考え物かもしれませんけれどね。それは人徳者と呼ぶには少々気味が悪いというか、やはり怒りがあることが、人間の個性の一端を担っているのも事実でしょう。

三木は「怒について」の中で、次のように言っていました。

今日、愛については誰も語つてゐる。誰が怒について眞劍に語らうとするのであるか。怒の意味を忘れてただ愛についてのみ語るといふことは今日の人間が無性格であるといふことのしるしである。

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コメント

正直に言って、どうしょうもないですねぇ。


僕自身、辛いものを食べている時に水がなかなか来ないと「セルフサービスにしてくれないかなぁ」と、内心不満を感じることはあるので、あまり人のことは言えないのですが。


水が来るのが遅かったら、店員さんを呼び止めて
「すみません、水待ってるんですけどー」とでも言えばそれで済む話ですのに。
そもそも水は無料でもあるためか、あまりせっつくのはむしろ恥ずかしかったりもするのですが……
(だからこそセルフサービスの方が楽だし、何も言わずとも黙ってお冷をチェックしてくれるお店には好印象を持ちます)。


何はともあれ、店員さんを怒鳴った時点で痛いなぁと……。

feeさん江

コメントありがとうございます!

水だけではなかったのでしょうけれど、やっぱり「怒りどころ」じゃない気はしますよね……。短気は損気ともうしますか。

勿論お店も悪いところはあるわけで、そこがどうしても許せないところだ、ということなら仕方がないですし、美味しんぼの海原先生のように凡人には思い至らないような深謀遠慮があって激怒したのかもしれませんが。

まあ私は、「怒りどころ」はもうちょっと別のところにとっておこうと思います(。・x・)。

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