よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2013/08/04(日) 21:29:59

私らしからぬ映画ネタで、『風立ちぬ』観て来ました。ネタバレを避けつつ、ちょこっとだけ感想を書いておきます。一度観ただけなので変わる可能性もありますが、初見の感想。少しでもネタバレ要素があるのは御免だ、という人は、以下閲覧にご注意ください。






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まず、事前に言われていたほど「退屈だ」とは思いませんでした。むしろ、面白かった。行く前に散々脅されたのでハードルが下がっていた可能性はあるにしても、映像は美しさと迫力があって魅力的だし、ストーリーも派手さは無いもののしっかりしている。話のテンポも早いし、複雑な時代背景などもわかりやすく提示できています。

ただ、「子ども向け」の部分が減ったというのは確かでしょう。理由は主に2つあって、1つは前提知識が必要だから。たとえば、関東大震災のシーンがあるのですが、そこで火事が多大な被害を及ぼしたことを知らないと、映像だけからは補いきれないようなところがありました。わかるようにはなってますけど、何か直接的な被害のシーンってあんまり描かれないようになってたので。

また、戦争の描写で第二次大戦期、日本とドイツがどういう関係にあったか、日中関係・日米関係がどんな状態だったかというのは、ある程度頭に入っていないと分かりにくかったんじゃないかなぁ。いま麻生さんの話でタイムリーな、ナチ政権のこととか。

他にも、途中一部登場人物たちがドイツ語で喋ったりするので、そこが類推できるかどうか。いや、分かんなくても良いんですけどね、別に。ただ、「分かんなくても良いということが分かんない」と、そこで集中が切れちゃう可能性はあると思います。ドイツ語のあとで同じ内容を日本語でしゃべっているとか、細かい部分でそれなりの読解力が無いと、混乱している間に次のシーンになっているかも。その辺りを考慮すると、巷で言われている通り、対象年齢は高校生以上とか、割りと高めになりそう。

シーンの展開も、ちょっと読みづらいかもしれないですね。現実と夢を行ったり来たりみたいなところが一部であるんですが、最近の中学生は「小説の中に小説が出てくる話が読めない」というような話を聞くことがあり、そういう、物語を読み慣れていない「子ども」だと、この唐突な往復運動は、少々しんどいものと思われます。

まあ、そのあたりは「オトナ」が見れば済むこととして、純粋に作品として見た場合どうか。面白かったし良い映画ではあるけれど、凄い映画ではないな、というのが私の感想です。

上述した通りストーリーは整っているし、明確なメッセージ性もある。それに賛成するか反対するかは別として、しっかりした骨格があります。「このシーンが見どころ」と言えるような、印象に残るシーンもたくさんある。観に来てよかったなぁと思いました。

ただ、描いているテーマや内容に対して、その表現で良いのか、という疑問がつきまといます。作中何度も「矛盾だ」とか、「俺たちは美しい設計が出来れば良い」みたいなセリフが(主人公の口からではなく、周囲から)出てくるのですが、主人公自身はそういうことを言わない。一貫して純粋に、理想を追い求めるから、愚痴る必要が無いわけです。

その清廉潔白な態度は胸を打ち、心地良い満足感を与えるものではある。けれど、彼らが直面している戦争というのは、決してそういう部分だけでは済まないところがあったハズです。たとえばこれが、アインシュタインと原爆の話だったらどうか。同じように、「夢を追いかけた」だけの綺麗な話で片付けられるのか。

ヒロインである菜穂子との恋もそうです。一番美しいところだけを切り取るそのやり方は、綺麗だなぁとは思えても、胸を打つものにまではなりきらなかった。

結局、「理想」はよく描かれていたけれど、悲惨な「現実」の側をシャットアウトして描いたことで、主人公である二郎の清廉さは、単に「汚れ」から目を背けているだけの脆弱なものに見えてしまいました。もろもろの問題を引き受けてなお、彼が気高い理想を貫いてこそ、そこで描かれる内容に凄みが出たんじゃないかなぁ。真の強敵と戦わずに終わってしまった不完全燃焼感と、戦争を描いた映画がそれで良いのかという納得のいかなさが、どこかつきまといました。

もちろんエンタメとしての側面があるからそんな無茶はできないのかもしれません。しかし、それならばそもそも、こういうテーマにせずに、最初からエンタメ全開で行けば良い。そうせずにあえて難所に踏み込んだのなら、突き詰めて欲しかったという気がします。

最初にも言ったとおり、何度か観るとまた違って見えるのかもしれません。一応暫定ということで。

あと、話題となった庵野さんの声は、最初違和感バリバリでしたが、終わる頃には慣れたので不思議。


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