よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2013/09/19(木) 23:40:53

なんか「あまちゃん」のコメント欄を巡る騒動で盛り上がってたので、本日は「ステマ」の話。

ステマということば、いっときは猫も杓子もステマステマと連呼して流行語大賞でもとりそうな勢いもありましたが、最近では随分落ち着いてきた感があります。ただ、やはりことあるごとに「これはステマだ」といわれるのを見かける。

でも、それじゃあステマの一体何が問題なのか、ということは案外きちんと問われていないようにも思います。たとえば、ステマに遭って学習参考書を買った結果、ものすごく学力が伸びて志望大学に合格できたとしたら……果たして、そのときステマは悪だと言えるのでしょうか?

そんなことを考えながら、ステマについての入り口というか基本的な話を、自分なりに整理してみました。

◆語義
半ばバズワードのように使われているステマということばですが、一応ある程度一般的な共通理解は存在します。分かりやすく詳しいものをネットから2つほど引用してみましょう。

 ▼Wikipedia「ステルスマーケティング
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ステルスマーケティング(英: stealth marketing)とは、消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること。
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 ▼同人用語の基礎知識「ステマ/ ステルス・マーケティング
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「ステルス・マーケティング」(Stealth Marketing) とは、英語の 「Stealth」(隠れる、こっそりする、隠密)、すなわち自らの正体を隠し、宣伝広告ではないフリをしてこっそりと宣伝広告をすることです。
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上記の記事は共に、説明も詳細なので気になる方はご覧ください。ポイントはおそらく2つです。

 (1) 実態は金銭を受け取って行われた広告業務=宣伝行為である。
 (2) 消費者には宣伝であることを隠している。


宣伝主体は商品に直接利害関係のない第三者を装う、のような細かい条件は(2)からの派生と考えていいでしょう。

この定義からすれば、たとえばあるバンドのファンが自発的にアマゾンレビューでベタ褒めコメントを投稿しまくるというのは、厳密な意味ではステマではありません。(1)の金銭授受が行われていませんから。ただ、実際にはかなり緩く使われているので、どんな意味でステマと言っているかは文脈次第かと思われます。この記事では、上の定義にそって厳密な意味でのステマを問題にすることとします。

なお上記サイトでは、「サクラ」や「ヤラセ」として同じような手法が昔からあったと紹介されています。「自作自演」なんかもそれに入るかもしれません。ただ思うに、「ヤラセ」とステマは少し違う。ヤラセには金銭の授受が必ずしも付きまとわないし、ネガキャンや叩きはヤラセに含まれても(厳密ないみでの)ステマにはあたらないからです。

このように、とりあえず語義を無理やりにでも確定させてある程度話をしやすくしておきます。

◆実際の事件
日本でステマが問題視されたのには、きっかけとなったいくつかの事件があります。ステマが問題視されてくる流れを抑える上で重要だと思われるものを、独断と偏見で幾つかピックアップ。

1.ニコニコ「歌ってみた」自演騒動。 (参考:ニコニコ大百科(仮) 「自演発覚祭り」
2007年頃、「歌ってみた」系動画の歌い手本人が、匿名コメントでの自画自賛を行っていることが、ニコニコのコメントIDで発覚した事件。大規模な祭りになり一時期は「歌ってみた」動画の絶滅も囁かれた。荒れ方としてはものすごい最大瞬間風速を記録し、ユーザーID暗号化をはじめ、ニコニコのシステムに少なくない影響を与えたとも言われている。ポイントは当時は「ステマ」という語は殆ど使われていなかったというところ。実際、これは「金をもらって行う宣伝行為」ではないので、厳密な意味のステマではない。だが現在ならおそらく、ステマ呼ばわりだろう。ステマということばの意味の拡大を見るうえで、興味深い事件である。

2.食べログ事件 (参考:東洋経済「食べログ事件で明るみ、巧妙な“ステマ”の実態」
2012年、利用者による飲食店のレビューサイト「食べログ」で、やらせ業者が順位操作を行っていたことが明らかになった事件。食べログが悪いというよりは業者が悪いはずなのだが、まるで食べログが悪いことを行っていたかのように言われていていい迷惑だろう。消費者庁も景品表示法の観点から調査を始めるなど、大きな騒動となった。

3.はちま起稿ステマ事件 (参考:ニコニコ大百科(仮) 「ステマ祭り」
2011年から2012年にかけて、ゲーム関連のまとめブログ「はちま起稿」の記事を巡って発生した事件。以前からSONY製品を高く評価し、特定企業(MS、任天堂など)をおとしめる傾向のあった同ブログが、意図的にそういった行為を行っていたことを認め、管理人が引退した(現在は復帰)。ステルスをしながら「マーケティング」と「ネガキャン」の両方をあわせて行ったので、はちま起稿をステマと非難した人は、ステマということばに両方の意味を読み込みやすくなったと言えるだろう。これもまた、ことばの幅が広がるきっかけになった可能性がある。

4.ペニオク詐欺事件  (参考:Wikipedia
2012年末、落札できない高額商品をエサに、オークション参加費用をだまし取る詐欺サイト「ワールドオークション」で、多くの芸能人が実際には落札していない商品を「落札した」とブログなどに書いて宣伝していた問題。詐欺サイト運営者は当然刑事罰を受けたが、関与していた芸能人の責任の有無が議論の的となった。ちなみに「ペニオク」(ペニーオークション)とは入札に手数料がかかる形式のオークションのことであり、ペニオクが詐欺なわけではない。これも食べログと同じで名前の下に「詐欺」とつけられたせいでイメージが悪くなった。これまたいい迷惑だ。

他にもシャフトステマ騒動とかサムソンが海外のアーティストを使ってGalaxyの宣伝をした事件、マスコミの韓国推しとかもありましたが、とりあえず国内の事件かつ関連がハッキリ判明したものに限定しました。

◆ステマへの怒り
明確な線引きは難しいのですが、ステマに対する否定的な反応を大きく4つくらいに分けてみました。

1.ステマによって被害をうけた。

実害がでたパターン。分かりやすいですね。
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私25万円投入して何一つ落札してません。そればかりか、先週金曜日突然インタネットから消えてアクセスできません。メールも発信できない、まったく連絡するところがありません!解決する方法は皆が警察に行って控訴しこの悪質ものを摘発し,騙された金を取り戻すことです。私はもう行ってます。みなで行動すれば、大きな力になります!必ず勝ちます!! 

(「口コミで詐欺ペニオクを激辛評価しよう」)
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2.ステマをしている相手が嫌い。

ステマそのものより、ステマしてる相手が嫌いというのが透けて見えるパターン。マスコミ、アフィブログ、業者など「不正」なイメージがつきまとう相手に発揮されることが多いように思います。
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シャフト=ステルスマーケティング常習
やらおん=企業ブログ ステマ会場

見ている人も同罪です。
(中略)
手垢がつき、都合の良いように編集されたものは情報でもなんでもなく
ただの企業の宣伝を見ているのと同じですよ。


(「シャフトが人気ブログやらおんをステマに使用 まとめ」)
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※一応コメントすると、「ただの企業の宣伝を見ているのと同じ」なら別に罪でもなんでもないハズ。ステマを汚いものとは言いつつ、一応宣伝と等価なものとみているのにこのように怒るのは、先に対象を攻撃するという意図があるからだろう、という感じです。


3.違法である。

「人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした」場合、軽犯罪法に問われます。また、景品表示法のガイドライン「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」にも抵触すると言われます。
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Q.ステマを行った場合,法律上のリスクとしては,どのようなものが考えられますか?

A.景表法上の不当表示に該当する可能性があります。

景表法というのは,ごく簡単に言うと,消費者が正しい判断と選択が出来るように,景品や広告の内容,方法を規制した法律です。

不当景品類及び不当表示防止法1条
この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
この法律は,「景品」と「表示」について一定の制限を設けています。

ステマの場合は,「表示」が問題になります。景表法に違反する表示は不当表示と呼ばれています。


IT法務.jp
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4.反道徳的・アンフェアな手段である。

明確に犯罪というわけではないけれど、道徳に反するというか仁義に悖るというか、とにかく「卑怯」というイメージで語るパターン。これが一番多いのではないでしょうか。
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1:風吹けば名無し:2012/08/11(土) 11:06:58.67 ID:1pwo6YCn

漫画でステマするのは卑怯だろ


(「コロコロコミックってステマ以外の何物でも無かったよな」)
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◆結局ステマは何が悪いの?
で、怒りの種類を参考にしながら「ステマの悪さ」について考えていきましょう。

まず「1.ステマによって被害をうけた」というパターン。これ、オープンな広告だったとしても、詐欺被害を出したら当然罪に問われますよね。つまり、ステマが悪いわけじゃなくて嘘の内容が悪いっていう話です。ステマのほうが警戒しにくい、ということはあるかもしれませんけど。

上で紹介した「IT法務.jp」さんにも書かれている通り、ステマというのは「単に広告であることを黙っているだけ」の行為です。つまりは宣伝の形式の問題です(金を受け取っているか、CMであると宣言しているか)。たとえば癌の特効薬を「ステマ」によって宣伝し、効果を挙げる可能性もあるわけです。被害がでたかどうかというのはステマの問題ではありません。

次に「2.ステマをしている相手が嫌い」のパターン。これはステマ関係ないです。ステマしてなくても叩くでしょう。

「3.違法である」について。これはまあ、言えたら強力です。ただ実際のところ「ステマだから犯罪」と認定される可能性は低いとも言われています。

既に述べた通り、ステマというのはコマーシャルの「形式」の問題。しかし法的に問題となるのは、宣伝の「内容」がほとんどです。優良誤認(ダメなものを良いように見せかけること)などがその典型ですね。

そして、たとえば優良誤認の不当表示でステマが罪に問われたとしても、これはステマ自体が違法になっているわけではない。TVCMのようなオープンマーケティングであっても、必要以上に商品を良い物に見せて消費者に誤解を与えたらアウトです。

「ステルスしているから悪い」という法的根拠はかなり薄いのですね。

最後、「4.反道徳的・アンフェアな手段」という話について。これは非常に多用な解釈ができるとは思うのですが、何がアンフェアかというと、「宣伝であることを隠している」という部分だ、ということは間違いありません。「3」が法的な責任追及だとすれば、こちらは道徳的な責任追及です。

では道徳的問題とは何か。おそらくそれは、「消費者の自己判断を妨げる」ということです。

宣伝であることが明らかな宣伝なら、消費者はそのことを折り込んで判断することができます。宣伝であることを差し引いて考えることができるんですね。ところがステマの場合、消費者は自分が見ているものが宣伝であると知らずに判断を強いられるわけです。意図的に消費者の判断を鈍らせるような工夫をしているのですから、消費者の自己判断への侵害であると言える。

ステマで被害にあったひとがステマという方法を毛嫌いする理由もおそらくここにあって、ちゃんと情報が開示されていれば騙されなかった、という思いが出てくるからでしょう。実際、作った人が「美味しいですよ」と言っている料理より、実際お客として行った人が「美味しかった」と言っているほうが、本当っぽさがあります。

ステマというのはそういう心理を利用することで、判断を誘導――少なくとも抑制しているわけです。

少しまとめてみます。

問題は、ステマはそもそも悪い行為なのか、悪いとすれば何が悪いのか、ということでした。

ステマというのはコマーシャルの形式の問題なので、ステマが悪いとすれば内容ではなく形式が悪いと言わねばなりません。「ステマをしている主体がそもそも気に入らない」というのは論外としても、ステマの方法自体は違法性を問いづらいものですし、また実際に被害が出たとしてもそれはステマが悪いのではなくてステマという手法を使って行われた詐欺が悪いはずです。

いわば「ステマ」というのはナイフとか包丁みたいなものであって、それを使って犯罪が行われるかもしれないけれど、だからといってナイフや包丁が「悪」かというと一概にそうとは言えない。そういう側面を持っている。

もうひとつ強調しておきたいのは、ステマが行われていることとその作品の実質は何の関係も無いということ。食べログでステマされていた店が実際にメチャクチャ美味しいことだってありえますよね。「ステマしていたから内容がダメ」というのは形式と内容を混同した、誤った判断であると言えます。

じゃあ、ステマは何の問題もないCM方法なのかというと、そういうわけでもない。

普通のコマーシャルとの比較をすれば、ステマは人が判断するのに必要な情報を必要以上にに制限し、十分な吟味を妨げるという特性があることも明らかです。「悪」だと言うならばこの点でしょう。そしてこれは、「卑怯」という感情を多くの人が抱く原因でもあると思われます。

最初に私は、「ステマの結果大学合格できてもステマは悪か?」と問いました。ステマであることと商品の内容とは原則無関係なので、ステマされたものがクソでも素晴らしいものでも関係ないのでした。だから、悪ではない(善でもない)。けれど、理念的に考えるのであれば悪である(十分な自己判断を妨げられた)。そんな風に結論づけてみることにいたします。


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