よい子わるい子ふつうの子

18禁PCゲームをメインに、ラノベや漫画についてもダラダラ話を書きます。長文多いです。

2013/11/06(水) 06:40:33

JASRACが、著作権使用料の徴収方法を巡って敗訴したというニュース。読売新聞の報道をソースとして、まとめサイトである「ハムスター速報」さんが「JASRAC死亡速報!カスラックの使用料徴収方式は独禁法違反と東京高裁が判決」というセンセーショナルな見出しをつけた記事を掲載しておられました。

読売JAS01

-----引用始め-----
JASRACの使用料徴収は競争を妨害…高裁

 テレビなどで流れる音楽の著作権使用料の9割超を管理する「日本音楽著作権協会(JASRAC)」の使用料の徴収方式が、新規業者の参入を妨げているかどうかが争われた訴訟の判決で、東京高裁(飯村敏明裁判長)は1日、「JASRACの方式は新規参入を著しく困難にして自由競争を妨げている」との判断を示した。


 その上で、この方式を容認した公正取引委員会の審決を取り消した。

 公取委が「独禁法違反ではない」と結論づけた審決を、裁判所が覆すのは初めて。1939年の設立以来、音楽の著作権管理事業を独占してきたJASRACのビジネスに影響を与える可能性もある。

 公取委は2009年、JASRACに徴収方法の廃止を命じたが、JASRAC側の異義を受け、昨年6月、一転して命令を取り消していた。

(2013年11月1日15時58分 読売新聞)
-----引用終り-----

ところが、記事本文を読めば判る通り、この訴訟は「使用料の徴収方式」を巡って起こされたものであり、JASRACによる著作権管理が違法、というわけではありません。もちろん徴収方式が変化することでJASRACに何らかのダメージが行く可能性はありますが、ハム速さんの「JASRAC死亡」はさすがに言い過ぎでしょう。

ハム速さんがこのような記事タイトルをつけたのは、意図的なのか勘違いなのかは判りません。ただ、今回の件について言えば読売の見出しに問題があると思う。「JASRACの使用料徴収は競争を妨害」という書き方になっていますから、そりゃぱっと見「徴収」がダメなんだと思いますよ。

この点、MSN産経ニュースのほうはもうちょっと分かりやすい書き方になっています。

 ▼「JASRACの使用料徴収方式 「他業者の参入排除」と高裁」(MSN産経ニュース)

msn産経

-----引用始め-----
JASRACの使用料徴収方式 「他業者の参入排除」と高裁
2013.11.2 00:18 [知的財産]

 テレビなどで使う音楽の使用料徴収方法をめぐり、公正取引委員会が独禁法違反で社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に出した排除措置命令を無効とした審決は違法として、著作権管理会社のイーライセンスが取り消しを求めた訴訟の判決が1日、東京高裁(飯村敏明裁判長)であった。飯村裁判長は、管理する楽曲を一定額で使い放題にするJASRACの「包括徴収」方式は、他の業者の参入を排除するとして、審決を取り消した。公取委は「上告も視野に対応を検討する」としている。

 この訴訟は独禁法の規定で高裁が1審。公取委は昨年、違反事実そのものが認められないと判断、刑事裁判の「無罪」に当たる審決を18年ぶりに出していた。

 飯村裁判長は、包括徴収方式は楽曲の使用割合を反映せずに一定額を徴収するため「テレビ局などがイー社への楽曲利用料の支払いを経費の追加負担と考え、イー社管理の楽曲の利用を避けた」と指摘。同方式が「イー社の事業活動の継続や新規参入を著しく困難にしたと認められ、他の事業者の事業活動を排除する効果を持つ」と判断した。

 ただ、独禁法違反の有無については確定的な判断をしておらず、排除効果以外の争点は「公取委が改めて判断すべきだ」とした。

 公取委は平成21年、JASRACに、楽曲の使用割合を反映する徴収方式に改めるよう求める排除措置命令を出したが、昨年6月の審決で「他の事業を妨げていない」と判断を覆した。
-----引用終り-----

msn産経ニュースのほうは、以下の点で読売オンラインの記事より内容が明確かつ正確です。

 ・「使用料徴収」ではなく「徴収方式」が問題であると見出しで表明している。
 ・JASRACの過去の徴収方式がどんなものであったかを明記している。
 ・訴訟の原告と被告が誰で、その内容がどのようなものかが書かれている。
 ・判決の理由をより長く、丁寧に紹介している。
 ・独禁法違反かどうかの判断を保留したことが追記されている。

というか、読売オンラインの記事は「速報」にすらなっていない雑な内容だったなぁという感じ。読売の記事よんで、今回訴えられてるのがさしあたってはJASRACじゃなくて公正取引委員会の判断だったことを一発で理解した人ってどのくらいいるんでしょうか? 少なくとも私は、てっきりJASRACが訴えられたんだと思いました。法律とかに詳しければちゃんと読めるのでしょうけど……。

そして産経の記事を読む限り、JASRACの「楽曲の使用割合を反映せずに一定額を徴収する」方式がよろしくないということです。つまり、使用頻度が高くなるような大人気の曲ほど「お買い得」になる方式であり、大手が人気楽曲を独り占めしたら中小の事業者は参入しづらいということでしょう。

この方式が変化したところで、多くの人が期待するような「JASRACによる厳しい著作権管理」は、それほど劇的に変化するかどうか判りません(現状ほぼ独占なので強気でいる、と考えれば変化しないとも言い切れないと思いますが)。

共同通信なんかはこの辺を綺麗にまとめた、端的な書き方をしています。

 ▼「音楽使用「新規参入排除」と高裁 JASRAC徴収方式めぐり」(47NEWS)

※「47NEWS」の共同通信配信記事については永続性のあるURLが割り当てられているので、基本記事が消えることは無いと考え、スクリーンショットは省略。

-----引用始め-----
音楽使用「新規参入排除」と高裁 JASRAC徴収方式めぐり

 日本音楽著作権協会(JASRAC)がテレビ局やラジオ局などと結んでいる音楽の著作権使用料の一括徴収方式が独禁法違反に当たるかどうかが争われた訴訟の判決で、東京高裁は1日、「他業者の新規参入を排除する効果がある」と判断し、適法とした公正取引委員会の審決を取り消した。

 独禁法違反の有無については確定的な判断をしておらず、事実上審理を公取委に差し戻す判決。公取委側は上告を検討する。

 問題となったのは局側がJASRACに一定額を支払えば管理曲が使い放題になる「包括徴収」方式。

2013/11/01 18:39 【共同通信】
-----引用終り-----

多少不親切ではありますが、「包括徴収」方式が何かなどを自分で調べていけば、十分な内容が読み取れる記事ではないでしょうか。こうして読み比べてみると、読売オンラインの記事の問題点というのは、次の3点であると思われます。

(1)事態を把握するのに必要な情報やキーワードが書かれていない。 例:「包括徴収」など
(2)不正確で誤解を招く表記。 例:「使用料徴収は競争を妨害」など
(3)漠然とした憶測を書いている。 例:「JASRACのビジネスに影響を与える可能性もある」

この3点セットのコンボによって、読み手が都合よく解釈し、なんとなくわかったような気持ちになる「おもしろい」記事の一丁上がりというわけです。共同通信の記事なら「ん? どういうこと?」と立ち止まりそうな部分もするっと読み飛ばしてしまいがちになるし、正当な競争を「妨害」していた「JASRAC」の「ビジネスに影響を与える可能性もある」のような言い方からは、ハム速さんのタイトルをお借りして言えば、「JASRAC死亡」という方向へ引っ張る意図が透けているようにも見えてしまう。

ちなみに読売オンラインの記事は、現在大幅に内容が加筆・修正されています。

 ▼「JASRACの使用料徴収は競争を妨害…高裁」(YOMIURI ONLINE)

読売オンライン2

-----引用始め-----
JASRACの使用料徴収は競争を妨害…高裁

 テレビなどで放送される音楽の著作権使用料を巡り、日本音楽著作権協会(JASRAC)の使用料徴収の方式が独占禁止法違反に当たるかどうかが争われた訴訟の判決で、東京高裁(飯村敏明裁判長)は1日、「JASRACは新規業者の参入を著しく困難にして自由競争を妨げている」と判断した。

 その上で、この方式を容認した公正取引委員会の審決を取り消し、同法違反に当たるかどうか改めて審理し直すことを求めた。

 公取委が「独禁法違反に当たらない」とした審決を裁判所が覆したのは初めて。公取委は上告を検討しているが、音楽の著作権管理事業を独占しているJASRACが徴収方式の見直しを迫られる可能性もある。

 原告は、2006年に新規参入した著作権管理会社「イーライセンス」(東京)。

 公取委は09年2月、JASRACが放送事業者との間で、曲の使用回数を問わず放送事業収入の1・5%を使用料として受け取る「包括徴収」の契約を結んでいるため、「新たな使用料を敬遠したテレビ局などが新規業者と契約しない」と認定。包括徴収が独禁法が禁止する「私的独占」に当たるとして、JASRACに同方式の廃止を求める排除措置命令を出した。

 しかし、これを不服としたJASRACからの審判申し立てを受け、公取委が12年6月、「証拠不十分」を理由に一転して命令を取り消す審決をしたため、イー社が同7月、審決の取り消しを求めて1審・東京高裁に提訴した。

 高裁判決は、民放のテレビ、ラジオ局の計13社が、使用料負担を軽減するため、イー社が管理する楽曲は使わないとの社内向け文書などを作成していた点などを重視。「包括徴収には新規業者を排除する効果があり、審決の判断は誤り」と指摘した。

(2013年11月1日15時58分 読売新聞)
-----引用終り-----

すげぇ分かりやすい(笑)。タイトル変わってないけど。

なんか時系列表みたいなのもつけてくれてるし……。最初の記事は何だったんだっていう感じです。書いてる人が変わったのかしら。あるいは、他媒体の記事の様子を見ながら手を加えていったのかもしれません。

結局、こういうのも「ネットリテラシー」(メディアリテラシー)の一貫ということになるのでしょうか、インターネット上の記事というのは、速報性が高いぶん、情報の精度に欠けていたり、表記が曖昧であることも多く、それゆえ誤解・誤読をする可能性が常につきまとっています。同じニュースであっても、全然違うのは上に見た通り。

他でいえば「時事ドットコム」のニュースでは(これ)、「「排除措置命令を取り消した審決には誤りがある」と結論付けた。」という記述で結ばれていて、独禁法違反の有無については判断せず公取委に差し戻したという内容がいまいち読み取れない(公取委の判断を違法と結論づけたようにも読める)書き方になっています。やっぱりメディアによって結構違う。

すぐに「誤読」を防ぐ方法というのは正直思いつかないわけですが、ほぼ横並びの時間帯で記事が掲載される紙媒体の新聞とかとは違い、ネットの場合報道者によって掲載時間に差ができるのと、同じ報道者であっても加筆・修正が容易であるというところに特徴があります。

ですから、報道の内容を読み比べたり、記事が出てから数日経って内容を読み返すことで、受け取る情報の精度を上げることができるでしょう。こういうのは情報の積み重ねという点で、紙媒体の新聞で特集記事が何日にもわたって掲載されたりすることと似ていますが、ネットの場合自分が積極的にアクセスするつもりがなければなかなか「昔の記事を振り返る」機会を得られないのが問題かもしれません。

とりあえず、1つのニュース、特に時事的なニュースに対しては、できれば複数の報道を見比べる(比べる対象がなければ出てくるまで待つ)というのは、それなりに重要かつ有用な心構えではないかと思います。

このエントリーをはてなブックマークに追加   

「ネットの報道についていろいろ」を読んだ人はこんな記事も読んでいます
話題の賞味期限 (2013/10/05)
センター国語よ何処へ行く (2013/01/21)
日展の談合騒ぎと表現の評価について (2013/10/30)
コメント
コメントの投稿
( 関連性のないコメントやトラックバックは、削除されますのでご了承下さい )
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら